学び直すなら今、なんだけど

 ここ数年、行きつけの本屋の棚とか見て、環境法のテキストがずいぶん充実してきたな、と思うようになったのですが、新司法試験の選択科目になったことによる浸透効果の現れだったのですね。司法試験なんぞついぞご縁がないもんで気にしてなかったわ。
 私が学生だった十ウン年前は、環境法なんて行政法の一分野、しかもマイナージャンルにすぎず、当時私の通っていた大学にも環境法に通じた教授がいましたが、学部生向けに持っていた講義は「行政法・Ⅳ」とかでした。そうだよなー。そもそも、「環境法」と銘打たれた履修科目を見た記憶がないもんなー。


 環境法というのは、せいぜいここ50年くらいで出来てきた新しい法学のジャンルです。
 環境法は基本的に行政法のワンジャンルです。行政法の最大の特徴は、憲法民法・刑法といった主要科目と異なり「行政法」という名前の法律が存在しないこと、体系の軸となる法典が定まっているものではないことです。したがって今ある行政法の学問体系というのは、一見体系的でない無数の法規の中に様々な共通性や法則性を見出し、体系立てて理解しようとする試みである、とも言えるのだと思います(極論すれば、今ある行政法の学問体系というのは、数ある行政法規を田中二郎が体系立てて整理したものを前提として理解し、広げていってるものだと言えるのではないでしょうか。そして「その体系を十分に理解した上で、実態に即しないところは、体系の方を疑ってみる」という立場において、阿部泰隆・中央大教授のトガりっぷりは半端ないです)。
 ところが、環境法は行政法の中では珍しく、「環境基本法」という、体系の軸になるっぽい名前の法律が存在します。
 環境法の特に面白いところは、環境基本法は平成5年に制定された比較的新しい法律であり、環境法制が曲がりなりにも体系化されたのはせいぜいここ20年のことだ、ということです。
 もう少し深堀りすると、公害問題が顕在化する→公害対策基本法をはじめ各種法制度が整備される→環境問題が公害問題だけでなく多様化する→環境法制の体系を定める必要が高まる→環境基本法が制定される、という経緯をたどってきているわけです。
 つまり、現実の環境問題が先にあって、それがフィードバックされて法体系が出来上がっていく。新たな環境問題に直面すれば、それがフィードバックされて法体系が変わる事だってある。常に法体系が進化し続けており、その仕組みを理解するためには、明文の法規を理解するだけでは足りず、現実の環境問題に対する理解が欠かせない、というところが、環境法の最も面白い部分ではないかと思います。


 そんな環境法の最新の構造を体系的に捉えた優れたテキストがいくつも本屋に並び、環境問題の生きた現場を知ることができる立場にある今は、まさに環境法を学び直す絶好のタイミングなのではないか、と思い始めた次第です。
 とりあえず日記のカテゴリに「水濁法」「土対法」とは別に「環境法」を作ってみた次第。個別の法令の話だけでなく、なるべく環境法全般に関するエントリも書いていきたい、そのためには環境法を今一度学び直したいと考えています。
 ……問題は、仕事終わり→子供のお迎え→夕飯の支度→子供にメシ食わす→子供風呂に入れる→子供歯磨きさせて寝かす→子供が寝た隙に夕飯の後片付けをする、というこの子供中心生活のどこに勉強する時間があるのか、という辺りですが。