環境法学習ノート_03

【環境法の基本理念】

  1. 持続可能な発展
  2. 未然防止原則・予防原則
  3. 環境権
  4. 汚染者負担原則



【持続可能な発展】
 環境と発展に関する世界委員会(ブルントラント委員会)の報告書で用いられたことで、各方面に影響を与え、リオ宣言、アジェンダ21気候変動枠組条約などにも採用された。
 以下の3つを柱とする概念である。

  1. 生態系の保全など、自然のキャパシティ内での自然の利用、環境の利用
  2. 世代間の衡平
  3. 南北間の衡平や貧困の克服のような世界的に見た公正



【未然防止原則・予防原則
 未然防止原則と予防原則の違いは、後者が科学的不確実性を前提としているところにある。
 未然防止原則はすでに慣習国際法の地位を占めており、わが国の環境基本法にも掲げられている(4条)。
 これに対し予防原則は、多くの国際文書に見られるようになってきたものの、未だ慣習国際法上の原則にはなっていないと解される。

予防原則の特色】

  1. 科学的不確実性という前提を伴うこと
  2. 起こりうる損害が、深刻又は不可逆のおそれがあること
  3. 当該行為が環境に損害を与えないことの証明責任を、行為者に負わせること

 特に第3点については、議論及び批判あり。
 予防原則の適用に当たっては、同時に比例原則の適用が必要。



【環境権】
 環境権とは「環境を破壊から守るために、良い環境を享受しうる権利」
 1970年に東京で開催された「公害国際シンポジウム」で初めて提唱された。その後の検討で、以下のように整理されてきた。

  • 環境権とは、環境を破壊から守るために、環境を支配し、良い環境を享受しうる権利である。
  • この権利に基づいて、妨害の排除又は予防を請求しうる。
  • この考え方は、環境は万人の共有財産であるという「環境共有の法理」に基づいており、単なる「受忍限度論」の克服を目指している。
  • 環境権は私権のひとつであり、環境という対象を直接に支配できる「支配権」である。

 判例は環境権を私権として認めてはいない。(環境利益は原告のみの個別的利益ではなく、民事訴訟の対象として考えにくい。)



【参加権としての環境権】
 環境権には、立法・行政過程への参加権としての側面があることを重視する議論が有力化している。
 参加権としての環境権を手続き的に保障するためには、市民参加と情報公開が必要。

【汚染(原因)者負担原則】
 汚染者負担原則(Polluter-Pays-Principle)とは、受容可能な状態に環境を保持するための汚染防止費用は、汚染者が負うべきであるとする原則である。
 元来はOECDが掲げたものだが、そこでは

  1. 汚染防止費用に対する原則にすぎない(原状回復や被害救済の費用を含まない)こと
  2. 最適汚染水準までしか汚染を防除しない(費用と損害の額によって受容可能な汚染レベルが定まる)こと

の制約があった。
 わが国では、公害問題とその対策の経験から、独特の汚染者負担原則が生まれた。それは

  1. 環境復元費用や被害救済費用についても適用されること
  2. 効率性を原則とせず、公害対策の正義と公平の原則として捉えられていること

を特色とする。



【原因者負担原則の根拠】
 環境基本法8条1項、37条。
 もちろん、原因者に対して具体的な義務を課すには、個別の法的根拠が必要。

【原因者負担の拡大・強化】
 容器包装リサイクル法、家電リサイクル法自動車リサイクル法等では、原因者概念が拡大されている。(間接的汚染者たる製造者に再商品化義務等を課す)
 廃掃法における措置命令についての排出事業者責任の強化、一般廃棄物の処理の有料化(排出原因者である各家庭に負担を求める)など、廃棄物・リサイクル等について原因者概念の拡大の傾向が見られる。