環境法学習ノート_02
【環境法とは】
環境への負荷を防止・低減することを目的とする法の総体を、環境法という。
【環境とは】
環境基本法には「環境」の用語の定義はない。
国民的意識の変化等によって変遷することを見越して、包括的・広範な概念として捉えている。
【「環境への負荷」と「公害」の違い】
公害とは、もともと、公益を害すること一般を意味する。
環境基本法における公害の定義は、公害対策基本法の定義を踏襲している。ポイントは以下の4点。
- 人の活動に伴って生ずること
- 環境汚染によること
- 環境汚染が特定の態様のものであり、かつ、相当範囲にわたること
- 人の健康又は生活環境に係る被害が生ずること
環境への負荷とは、「人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるもの」をいう(環境基本法2条1項)
【環境への負荷概念の背景】
人間活動の大規模化(向上と発展)が、自然の浄化・復元作用を上回る排出物を自然界に放出
⇒個人責任の追及では対応できず、新たな公共の手による法的統制が必要
企業は、企業内部の収益の最大化を目標としているため、外部費用(企業活動の企業外に及ぼすマイナス面)を考慮しない
⇒従来無償と考えられてきた自然環境の便益や効用を評価し、その利用コストを内部化する必要
【環境法の特色】
- 法領域の多様性(公法と私法/法律と条例)
- 計画法的性質・地域的性質(警察法から管理法・計画法・政策法への転換)
- 保護されるべき利益の公共性・科学的不確実性
【環境法の諸領域】
- 環境公法と環境私法の関係
- 法律と条例の関係
- 国際環境法と国内環境法の関係
(1.環境公法と環境私法の関係)
環境訴訟は当初、損害賠償請求訴訟(私法上の救済)として争われたが、私法上の救済には限界があり、公法による未然防止の重要性が増してきた。
環境私法と環境公法とは、被害者の救済と環境負荷の未然防止という異なる観点に立脚しているため、どちらも欠かすことのできない、車の両輪である。
(2.法律と条例の関係)
伝統的には法律先占論。
その後、徳島市公安条例事件最高裁判決などがあり、現在の学説は法律先占論を採らず、一定の場合に上乗せ・横出し条例を認める傾向。
(3.国際環境法と国内環境法の関係)
国際環境法(条約の批准等)により、国内環境法が制定又は改正され、必要な制度を整えるのが通常の流れ。
(例:気候変動枠組条約⇒温暖化対策法)
ただし、必ずしも国内法による対応が行われない場合もある。(例:ラムサール条約)
【環境法の体系:国際環境法】
- 地球温暖化問題(気候変動枠組条約、京都議定書)
- オゾン層・酸性雨(オゾン層の保護のためのウィーン条約、モントリオール議定書)
- 船舶起因汚染
- 海洋投棄起因の汚染(ロンドン条約)
- 有害廃棄物の越境移動(バーゼル条約)
- 生物多様性の保全(生物多様性条約、カルタヘナ議定書、ワシントン条約)
- 地域的自然環境の保全(ラムサール条約、南極条約環境保護議定書)
- 世界遺産の保全
- 貿易と環境
- その他(POPs条約等)
【環境法の体系:国内環境法】