土対法は何をどこで間違えたのか

  1. 土対法が制定されたとき、水濁法がすでに地下水汚染を対象としていた。→土対法は狭義の土壌汚染、すなわち、固体である土壌粒子の汚染のみを対象とする法律となり、土壌粒子の汚染と地下水汚染を別の法律で扱う不都合が生じた。
  2. 土対法の制定当初は、法の対象とする土壌汚染を人為的汚染のみに限定していた。→点源である汚染源から平面的に汚染が広がるモデルにしか対応しておらず、自然的汚染や埋立材由来の汚染に対してそもそも法制度が対応していない(にも関わらず、平成22年から法の対象に加えてしまった)。
  3. 土地は私有財産であり、土壌汚染対策に多額の公費を投ずることは困難。→土地所有者等に調査及び対策措置の義務を負わせざるをえない。→原因者と土地所有者が異なる場合に、土地所有者に過度の負担を強いる。(自然的原因で4条2項の調査命令を受ける場合を想像せよ。原因者でない土地所有者が、行政庁からの強制命令により、ボーリング1本100万円とかの負担を強いられるとすれば?)
  4. 法制定時は水濁法と制度的にリンクしていた(水濁法の有害物質と土対法の特定有害物質は原則として同じ物質、水濁法の有害物質使用特定施設の廃止が3条調査の要件となる、等)が、その後の水濁法の改正内容を土対法が追いかけていない(有害物質の追加、有害物質貯蔵指定施設の規制等)→規制範囲がかぶる部分と異なる部分があり、事業者側の負担が大きい(水濁法で漏洩防止義務を課せられた挙げ句土対法4条の調査義務を課せられるのではないか、との疑念が拭えない)。


 地質汚染に対する巨視的な方向性を持たず、個別の問題に対応する制度改正ばかりを重ねた結果、一貫性のない中途半端な水濁法と一貫性のない中途半端な土対法が出来上がったんじゃないか、とつまりはそういう批判。