事前手続の期間短縮は可能か

 土対法4条2項の調査命令というのがある。形質変更の届出があった土地に対して、行政庁が地歴調査を行い、汚染のおそれがある場合に土地所有者等に調査を命じるものだ。命令だから当然、不利益処分に当たり、行手法により事前手続(聴聞又は弁明の機会の付与)を要する。
 この4月以降、この調査命令を数件発出しているが、弁明の機会の付与通知書を渡した際に、弁明の機会なんていらないから、一日でも早く命令を出してくれ、と言われて、対応に窮したことが何度かある。調査命令自体は避けられないものと分かっているので、それなら工期の遅れを一日でも少なくしたい、というのがその理由だ。
 期限を定めて弁明の機会を付与した後に、被処分(予定)者の申し出によって、弁明書の提出期限の到来前に、不利益処分を行うことは可能か?
 行手法の立場からは、おそらく認められないだろう、と思う(弁明書の提出期限が被処分者に明示されているのは、その期限までは不利益処分が行われず、被処分者の地位が保障される、という側面を有する。たとえ被処分者からの申し出であっても、行政庁の権限で期限到来前に処分を行うことは、事前手続のこのような意図を損なうものであるから、認められない)。行手法は、被処分者が不利益処分を自ら進んで受けようとするような事態を、想定していない。
 であるならば、個別法において、不利益処分に係る事前手続の特例を定め、申出による事前手続の省略とか期間短縮とかが制度化されてもいいのではないか、ということを、思いついた。
 ここで挙げた土対法の例でいえば、14条の指定の申請によって実質的に期間短縮の効果を作り出す、という道が用意されてはいるが、それとは別に、調査命令→調査報告→区域指定という法の通常の流れに乗っかりつつも、全体の処理にかかる期間を短縮したい、というニーズに応えるために、事前手続の期間短縮が制度化されたら面白いのにな、とか思う。


 で、実際のところはというと、「命令書出るんでしょ?弁明書の提出期限翌日の朝イチで役所に取りに行きますから」とか言われて慌てて命令書の決裁受けてる次第ですけれども。