ふるさと寄附のここが許せない

長めのお休みが明けて出勤すると、まずふるさと寄附金(間違ってもふるさと納税とは呼びたくない)の処理をするのが定例となっています。クレジットカード決済やインターネットバンキングのおかげで、祝日でも夜中でも寄附金を受け入れることができるのです。

数ある自治体の中から縁あって我が市にご寄附をいただいたのは大変ありがたく、幸運なことだと思いますが、他方で、ゼロ・サム・ゲームの中で自治体同士が寄附金を奪い合うこの状況は、やはり心苦しいものがあります。

ふるさと寄附金の功罪を考えたときに、まずよかった点としては、遠いところにお住まいの方にも自分の市町村を知ってもらえるきっかけになったこと。返礼品のチョイスを通じて自分の自治体の名産品や他の市町村と異なる特色を再発見できたこと。寄附文化の弱いこの国で寄附が身近に感じられる効果があったこと。などが挙げられると思います。

他方、今後見直されるべき点としては、先に挙げたように「自治体同士の殴り合い」となっている現状があり、全体としては自治体の疲弊を招いていること。返礼品が「自主財源によらない公共事業」の性質を持ち、寄附金額を超えない限りで高額な返礼品を用意した方が自治体にとって得であるため、歯止めがきかなくなる傾向にあること。地方税の原則(負担分任性や応益性の原則)を乱すものであること。などが挙げられると思います。

このようにメリットとデメリットを並べたときに、メリットは比較的短期的・一過性のものである(したがって、事業を長期間継続しても効果の増大幅は限られ、いずれ頭打ちになる)のに対し、デメリットはより根本的な、制度そのものの齟齬といえるものである(したがって、事業を長期間継続した場合に、ひずみが蓄積して被害が増大するおそれがある)といえると思います。つまり、未来永劫続けていくような事業/制度ではなく、どこかで廃止又は縮小を考えていくべきものなのではないでしょうか。

そしてタチの悪いことに、いち自治体の立場から見れば、返礼品レースから撤退することは損になる、他の自治体より先に自分の自治体が返礼品をやめることは不利になる、という事情があるため、自治体単独で返礼品事業を廃止・縮小するという判断が難しくなっています。

本来的には、制度を設計した国が「風呂敷のたたみ方」を考えてくれるのが一番良いと思うのですが、制度の根幹に触れない「通知」なんかで何とかしようとしている辺りを見ると、国による早めの幕引きは期待しない方がいいかもしれません。この消耗戦が自治体から「撤退する体力」さえも奪ってしまう前に、自治体相互、かつ全国的な形(例えば、地方六団体のような場で)の調整がされることを願います。