政策型条例の守備範囲(都道府県と市町村)

 都道府県と市町村の役割分担について、ふと考える。
 法律の委任を受けない、いわゆる「政策型条例」の場合、都道府県と市町村の守備範囲の境界は曖昧で、時に重なり合う。例えば、「地産地消」とか「企業誘致」なんて都道府県・市町村のどちらで条例作っても違和感ないし、実際に両方で作っていることもある。
 もちろん、都道府県と市町村とはそれぞれ互いに強み・弱みがある(一例を挙げれば、許認可権を多く持つのは都道府県だし、地縁団体などとより近い関係にあるのは市町村だ)から、都道府県と市町村とで同じ政策目的の条例を持っているからといって、かぶる部分がまったくの無駄と決めてかかる必要はないのだが。
 とはいえ、暴力団追放条例を市町村で作れ、と言われても、心構えを説くスローガンかご近所の底力的条例とするのがせいぜいの限界で、警察力の行使を伴うより実効性の高い条例は、やはり都道府県で作ってもらわざるをえないように思う。逆に、レジ袋削減を都道府県条例でやられたら、相当な反発を招くだろう。明確な線引きは難しいとしても、何がしか、都道府県がやるべきものと、市町村がやるべきものとの色分けはあってしかるべきかもしれない。


 自治体法務論の中でも立法法務について語る部分は、特に憲法との関係を意識する。政策法務とは憲法的価値の実現手法である、というのは鈴木庸夫・千葉大学法科大学院教授の言だが、自治立法によって憲法的価値を実現する、ということは、取りも直さず、自治立法において立法事実の収集こそが決定的に重要である、という要請に繋がる。
 この話の延長線上に、もしかしたら、政策型条例における都道府県と市町村の守備範囲の線引きについてのヒントがあるのではないかな、ということを思いついた。つまり、ある政策目的を持った条例を制定するに当たり、都道府県と市町村のいずれがその条例を制定すべきか、判断の付け難い場合にあっては、日常の行政活動の中で、都道府県と市町村のどちらがより説得力のある立法事実を得られるか、というところで判断するのも、ひとつの方法かもしれないな、と。


 まあ、現時点では単なる思い付きです。
 いずれ具体的な事例に即してもう少し深く考えてみたい気もする。