裁定的関与の落とし前

 地裁からずっと気になってた事件が最高裁で決着しました。

海上町(現旭市)と銚子市東庄町にまたがる民間の産業廃棄物最終処分場をめぐり、周辺環境に悪影響を及ぼすとして、地元住民が設置許可取り消しと建設差し止めを求めた行政、民事訴訟で、最高裁第1小法廷(白木勇裁判長)は10日までに、上告を棄却、受理しない決定をした。県の設置許可を取り消した行政訴訟の高裁判決が確定する。決定は9日付。

9月11日付け千葉日報ウェブ

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 この事件、県の行った産廃処分場の設置許可が取り消された、というだけでも、十分注目すべき事案だ。事業者が経理的基礎を欠いており、長期安定的に処分場の管理を行う能力があると認められないことを主な理由として、許可が違法であると認められたのは、多くの環境行政担当者にとって、勇気ある不許可の決断をするための追い風となる判例だと評価できるだろう。(その意味で、千葉県がこの事案を最高裁まで争ったことは、本件事案の早期解決という点を考えれば苦渋の決断であったものの、今後同様の事態が全国で繰り返されることを避けるという点ではそうせざるをえない決断だったのだし、また、森田知事のコメントに「県の主張が受け入れられず遺憾」のような文言がないところも、本件に関しては千葉県も、敗訴をあらかじめ織り込んだ上での上告・上告受理申立てだったのだろうと評価できる。閑話休題
 しかしそれ以上に注目すべきなのは、大半のマスコミは報じてくれないところだが、この事案が「裁定的関与」都道府県知事の処分に対する国への審査請求の裁決を実質的に覆すこととなったということだ。
 この事案のたどった事実経過をざっくり示すと、

  1. 事業者から産廃処分場許可申請
  2. 千葉県、これを不許可にする
  3. 裁定的関与の規定により上級行政庁である厚生大臣(当時)に審査請求
  4. 国、県の不許可処分を取り消し
  5. 県、再度審査のうえ、今度は許可
  6. 地下水を飲用している周辺住民などが、許可処分の取消訴訟提起
  7. 県敗訴

 という感じだ。
 機関委任事務が廃止されて、自治体の行う事務がすべて「自治体の事務」になった今日、裁定的関与の生き残る道などないので、関係省庁におかれては、一刻も早く関係法令を改正していただきたいところ。自治体に処分を行わせる以上は、当該処分に係る争訟も含めてすべて自治体に責任を負わせるべきであるし、逆に、処分の内容に国が関与する必要があるのであれば、そんな処分は最初から最後まで国が責任を負うべきと愚考しますが如何?


※いろいろ間違ってたので修正(9/14)。記憶だけで書くとダメね。裁定的関与ではなく、分権一括法前の事案で、機関委任事務であるので、上級行政庁への審査請求でした。大筋の話はそのままにしときます。