放射線と放射能

 そもそも「放射線」「放射能」ってナニ?というところから超ざっくり解説。細かい間違いには目をつぶっていただくとともに、大きな間違いにはご指摘をいただけると助かります。



放射線放射能


 われわれが「放射線」と呼ぶものの正体は、大きく分けて2種類あり、ひとつは「高速で動く粒子(アルファ線ベータ線中性子線)」で、もうひとつは「紫外線よりさらに波長の短い電磁波(ガンマ線、エックス線)」です。
 いずれにも共通の特徴として、「透過性」と「電離性」があります。
 透過性とは、ものを通り抜ける力です。放射線の線種によって、薄い紙程度で遮断されるものから、金属やコンクリート板を通り抜けるものまであります。
 電離性とは、原子や分子とぶつかったときに、そこから電子を分離させる力です。
 このような透過性・電離性をもつ放射線(電離放射線)に大量に被ばくすると、造血器や生殖腺などの器官に急性障害を起こす可能性があります。また、染色体に障害を及ぼし、発がんのリスクを高めることとなります(その影響は確率的で、ばく露量が多いほど発症リスクが高まります)。
 放射線は自然界にも存在し、また、宇宙から降り注いでもいますので、われわれは日常生活の中で常に微量の放射線を浴びています。


 他方で「放射能」というのは、「放射線を出す能力」のことです。
 しかしながら、「放射線を出す能力のある物質」のことも、同様に「放射能」と呼ぶこととなっており、このことが若干話をややこしくしています。
 したがって「この場所は放射能に汚染されている」などと言う場合には、「放射線を出す能力のある物質が多く存在する」ことを意味します。



放射性物質


 原子は、原子核と電子からなり、原子核は、陽子と中性子からなります。
 多くの物質(元素)は、電子・陽子・中性子の力のバランスが取れていて、安定的に存在していますが、同じ元素であっても、中性子の数が異なるなど、原子の重さ(原子量)が異なるものがあります。
 このような元素(原子)には不安定なものがあり、より安定的な形になろうとするために壊れようとする性質があります。このような不安定な元素が壊れる際に、放射線が放出されます。
 こうした不安定な元素を「放射性核種」とか「放射性同位体」などと呼びます。一般に言われる「放射性物質」とは、こうした放射性核種のことです。



【被ばく経路】


 人体が有害な放射線にばく露される経路には「外部被ばく」と「内部被ばく」があります。
 外部被ばくとは、放射線を対外から浴びることで、内部被ばくとは、飲食などで放射性物質を体内に取り込むことで被ばくすることです。



シーベルトとベクレル】


 放射線の量を表す単位として「シーベルト」を用います。
 ある場所において、放射線の外部被ばくの評価をする際には、その場所に1時間いた場合にどれだけの放射線量を浴びることになるか、を表すため「マイクロシーベルト/時」のような、1時間当たりの放射線量を測定することで評価します。
 放射性物質の量(正確には、核種ごとに壊れるものの数)を表す単位として「ベクレル」を用います。
 内部被ばくの危険性を評価する場合、農産物や飲用水などに、どれくらいの量の放射性物質が含まれるのかを表すため、放射性物質の種類ごとに、単位ベクレルで表します。例えば「放射性ヨウ素につき○○ベクレル/kg」のように、その物質1キログラムにある種の放射性物質がどれくらい含まれるか、で評価します。



 放射性ヨウ素の詳しい話はまた後日。