放射性ヨウ素

ヨウ素


 小中学校の理科の実験で「デンプンにヨウ素液をたらすと藍色に…」というのをやった記憶があるかもしれません。あれです。
 自然界では、海水中や海藻に含まれています。あと、千葉県の真ん中らへんで天然ガスと一緒に出てきます。
 成長ホルモンであるサイロキシンなどの、甲状腺ホルモンの材料になるので、人体にとっても必須元素のひとつです。



ヨウ素−131】


 ヨウ素同位体のひとつです。「131」というのは原子核の質量、つまり原子核の陽子と中性子の数の合計を表します。安定的なヨウ素が「127」なので、えっと、たぶんそれより中性子が4つ多い…と思います(このへん弱気)。
 ウラン核分裂によって大量に生成される…そうです(このへんの仕組みはさっぱり分かりません)。
 崩壊するときにベータ線を放出する放射性物質です。半減期は8日くらい。



半減期


 放射性物質は、時間とともに崩壊していきますが、その崩壊スピードは物質ごとに決まっています。
 放射性物質が崩壊して最初の量の半分になるまでの時間を「半減期」といいます。
 つまり、放射性物質であるヨウ素−131の場合、半減期は約8日なので、8日でもとの量の2分の1となり、さらに8日経つともとの量の4分の1、さらに8日で8分の1…と減少していくわけです。



【生体濃縮】


 例えば、脂溶性のあるDDT(殺虫剤)が水中に入った場合、まずプランクトンの体内に蓄積されますが、それを捕食する小魚の体内にはより高濃度で蓄積され、さらに小魚を捕食する大型の魚の体内では高濃度となり…というような話が『沈黙の春』という本の中であったような気がします(弱気)。
 当初、環境中ではそれほど高濃度ではなかったとしても、それが生物体内で蓄積されやすい物質であった場合、食物連鎖を通じて、より高位の捕食者の体内においては、高濃度となってしまうことがあります。これを生体濃縮といいます。



【放射性ヨウ素の被ばく経路】


 チェルノブイリ原発事故の影響により、周辺地域で、子どもの甲状腺がんの発症リスクが高くなったと考えられています。
 その経路としては、事故により大気中に放出された放射性ヨウ素が、降下して牧草に沈着し、それを食べた乳牛の体内で生体濃縮され、その牛乳を継続的に飲食していた子どもの体内で放射性ヨウ素甲状腺に蓄積し、甲状腺における内部被ばくを受けた、というふうに考えられています。
 なお、甲状腺ホルモンは成長と強いかかわりがあり、甲状腺の活動が活発な子どもの方が大人よりヨウ素を取り込む力が強く、影響を受けやすいと考えられています。



安定ヨウ素剤


 放射性ヨウ素による内部被ばくの危険がある場合に、予防的に、前もって安定的なヨウ素を十分に摂取し、甲状腺を安定的なヨウ素で飽和させておくことによって、放射性ヨウ素甲状腺で取り込まれるのを防ぐ方法があります。
 この場合に摂取される、安定的なヨウ素をヨウ化カリウムの形にしたものを、安定ヨウ素剤と呼びます。
 あくまで緊急的、予防的な方法であり、副作用のおそれもあるので、安定ヨウ素剤の服用は医師の判断により行われる必要があります。



【参考URL】

放射線医学総合研究所放射線Q&A)
http://www.nirs.go.jp/rd/faq/radiology.shtml