当分の間

 さて、真面目な話。
 全国の法規担当者の皆様と同じく、当方も規則等の審査の海を泳いでいるところです(多少、来年度の6月議会の準備を始めていたり)。
 で、この時期、年度の変わり目なので、22年4月1日施行を目指す規則・訓令・要綱(規程形式を用いる告示)のオンパレードです。年度の変わり目で例規の改正を要するということは、何らか、新年度で新たに予算が確保できる見通しだとか、事務事業の見直しの成果が出ただとか、とにかく、仕事のやり方そのものが新しくなるので、例規も新しくしなければならない、という類のものが大半です。いきおい、新規制定や抜本的改正の案件が多くなり、軽微な改正の事案はあまりこの時期にはやって来ません。
 そうなると、法規担当者としては、制度の切り替えがスムーズに行われるかどうかに気を使うことになります。具体的には、附則に設ける経過措置に気を使うことになるわけですが、担当課の当初案では「この規則は、平成22年4月1日から施行する。」とだけしか書いてないところに、「経過措置いらない?大丈夫?」と念を押す仕事が必要になってくるわけです。
 この時期よく使う経過措置のパターンというのはいくつかあって、

 (適用区分を定めるパターン)
 改正後の○○規則の規定は、平成22年4月1日以降の□□から適用し、同日前の□□については、なお従前の例による。

 とか

 (新旧の手続を併存させるパターン)
 改正前の○○規則の規定に基づき作成された用紙は、この規則の施行後においても、当分の間、適宜修正のうえ使用することができる。

 とか

 (改正前後のものを旧手続で救済するパターン)
 この規則の施行の日前に、改正前の第○条の規定による決定を受けた□□については、同日後も、なお従前の例による。

 みたいなのが代表選手です。
 で、平成22年政令第8号による改正後の高齢者医療確保令で、なんか無理無理に「当分の間」って文言が放り込まれたのを見て、若干思うところがあったわけですよ。「当分の間とか言いつつどうせ後期高齢者医療制度廃止まで継続だろ?ケッ」みたいな。
 しかし他人に文句を言えば大概自分に跳ね返ってくるもので、上に挙げたような「経過措置の代表選手」たちにも、もれなく「なお従前の例による」とか「当分の間」といった、(明確性を欠くがゆえに)便利な文言が織り込まれているわけです。
 このような経過措置は、円滑な事務手続の移行に寄与する反面、明確さを欠き、制度改正の趣旨を踏まえずいつまでも旧規定の運用を引きずる原因ともなりかねないものであって、あまり乱発するのもいかがなものか、という気が、ちょっとだけしてきました。経過措置を設けるときは、その経過措置が終了して、完全に新制度に移行するのがいつになるのか、明確なイメージを描けるようにしてやることを、少し意識してやらなければいけないのかもしれません。


 ……とか言いつつ今日もまた「規程の廃止後の出納整理期間に支払いがずれ込む案件がないとも限らないから、経過措置でちょっと延長しとけば?」とか実務的なアドバイスをしてしまう俺がいるわけですが。