社会福祉施設の指定管理者

 国からの通知によれば、養護老人ホーム保育所も指定管理者導入可能な「公の施設」とのこと(平成15年8月29日付け雇児総発第0829001号/社援保発第0829001号/障企発第0829002号/老計発第0829002号)。
 しかしこうなってくると、公の施設って何だろうね?という疑問が生じてくる。自治法244条は「住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するための施設」と定義しているわけで、逐条的には、観光ホテル(当該地方公共団体の住民の利用に供さない)や学校給食共同調理場(直接住民の利用に供さない)や競馬場(住民の福祉増進の目的を有さない)が、「公の施設っぽく見えるけど公の施設じゃないヨ」というものの代表例として挙げられる。これらと比較したときに、養護老人ホームの措置入所や保育所における保育の実施を、公の施設の「利用」と言い切ってしまうことに違和感を覚える。むしろ、これら社会福祉施設も「公の施設っぽいけど公の施設じゃない」もののカテゴリーに入れた方が違和感ない気が。
 まあ、それはそれとして。
 社会福祉施設に指定管理者を導入する場合、どこまで市が統制するか、というのは、なかなか難しい問題だ。10月28日のエントリで触れたように、公の施設の行政目的を達成するための基本条件の部分は、行政が握る(条例化することで指定管理者への規範とする)必要がある。この規範性の強弱は公の施設の性質によって異なってくるところで、例えば、道路や公園のような、誰でも自由に出入りできる施設の場合は、ほとんど条例で規制する必要はない(逆に、清掃業務や修繕なんかを個別に市が直接発注しても、コスト的にあまり大きな違いはなく、その点でわざわざ指定管理者にするメリットが薄い)。会議室やホール、スポーツ施設などの「利用許可を受けた者が独占的に利用できるが、原則として誰でも利用許可を受けられる」という施設の場合、利用許可の手続の部分、公平な利用関係を確保するための貸出し手続の公正の部分を、行政が担保する必要がある。したがって、貸出し手続について条例の規律密度を高めるのが妥当だ。
 さて、社会福祉施設。これは、先に挙げた施設に比べて、格段に、規律密度を高める必要があるように感ずる。住民の自由な利用に供する施設ではなく、市長が当該施設の利用が必要であると判断した住民に対し利用させることを決定する仕組みになっているのだから、単に「入ったらあとは好きにしてていいよ」というわけにはいかず、入所者と指定管理者、あるいは入所者相互のルールを、設置者である市が「条例」の形で示さなければならないのではないか。
 その結果、社会福祉施設に指定管理者を導入する場合の当該施設の設置管理条例の形態は、「施設運営規程のダイジェスト版」みたいな形がいいのかな、と、漠然と考えつつある。
 今後もう少し詳しく検討します。