書類の在処

 恥ずかしながら当市の水濁法関係書類は、整理整頓されているとは到底言えない状態にある。


 もちろん、敷地が100万平米くらいあって特定施設の数も100個くらいあるような大工場に関する届出書類なんかは、それなりに古い方から順に綴じて箱に入れてあったりするのだが、問題は、排水基準が適用されないような小規模事業場に係る届出書だ。
 特に「旅館業の用に供する施設」「飲食店に設置される厨房施設」「洗濯業の用に供する洗浄施設」「自動式車両洗浄施設」辺りは、小規模事業場の数が多すぎてまるで整理できていなかったのが実態である(いなかった、と過去形にしたのは、最近俺がだいぶ整理したからだ)。
 あと、当市は市の全域が総量規制の対象となる「指定地域」であるため、201人槽以上の規模の浄化槽が「指定地域特定施設」として規制対象となっており、そのへんの書類もぐしゃぐしゃになっていたので目下整理中である。


 これらの書類が整理整頓されていないことについて、あまり過去の担当者を責めるわけにもいかない事情もある。
 水質汚濁防止法施行令が改正されて、新たに水濁法の規制対象となる「特定施設」に追加された施設を有する事業場は、特定施設となってから30日以内に「使用届」を提出しなければならない。
 したがって、昭和49年に旅館業の用に供する施設が特定施設となれば山のような使用届が出され、昭和63年に飲食店の厨房施設が特定施設となれば山のような使用届が出され、平成3年に指定地域特定施設が加わればまた山のような使用届が出される。それぞれ当時の担当者は、1ヶ月の間に何十件と出される(それも、大半が提出期限すれすれに提出される)使用届の内容を確認し、事業場の所在地、放流先、届出排水量等を記載した管理台帳を作成する作業に忙殺されるわけだ。届出書に不備があれば補完を求める必要があるだろうし、届出書の書き方が分からないという事業者には必要な指導をしなければならなかっただろう。
 そして届出書の受付業務及び確認業務が一段落したところで、積み上がった大量の届出書をさてどこにしまおうと考えたときに、とりあえず全部段ボール箱にひとまとめにして箱に「旅館業」「厨房施設」「指特」と書いて書庫に入れておくことにした、という判断を、責めるのは酷というものだ。
 このような経緯を経て「ホテルとレストランを併設し、201人槽以上の浄化槽が設置されたゴルフ場」の届出書類は、3つの箱に分散した状態となる。
 こんな感じの政令改正が何度も何度も繰り返されると、書類の散逸には歯止めがかからない。
 さらに悪いことに、管理台帳は届出書の受付と同時にきちんと更新しているから、大抵の業務は管理台帳を見ることで事足りてしまう。結果、届出書を整理整頓しようというモチベーションは低下する。


 で、時々届出の詳細事項を確認したり排水経路等の添付図面を確認したりする必要にかられて、書庫の大捜索を行う羽目になる。
 そこで担当者が一念発起して書類の整理を始めることもあるし、残念ながら取り出した書類をちゃんと元の場所に戻さない担当者もいたりして、ごく一部だけ整理されていたり、逆にどこに何があるか見当もつかなくなったり、年々カオスの度合いは増す一方となる。
 そんなわけでここ数日、とりあえず収納された書類のリスト化に着手してみた。こういうときのコツは下手に書類の場所を動かしすぎず、まず「どこに何があるか」をリストアップすること。しかる後に、書類の移動に当たっては移動のログを残しながらやれば、混乱は最小限に抑えられる。はず。だといいな。