金融機関検査

会計管理者は、指定金融機関、指定代理金融機関、収納代理金融機関の検査をしなければいけません。(地方自治法施行令168条の4)

 

後輩「収納代理金融機関の検査って、何を見ればいいんですか?」

俺「基本は、金の出入りが合ってるかどうかだね。納付書の原符と、公金払込書と、指定金融機関からの領収書と、別段預金元帳を突き合わせて確認する」

後輩「別段預金元帳?」

俺「収納代理金融機関では、市の公金を専用に取り扱うための別段預金口座を設けてもらっている。元帳っていうのは、金融機関が持ってる、まあ、預金口座の原本だと思ってくれればいいよ。市の公金を収納したときは別段預金に入金されるし、収納した公金を指定金融機関に払い込むときは別段預金から出金される」

後輩「なるほど」

俺「どこか特定の一日に着目してみようか。1月15日、この日の公金収納件数が5件で、収納金額が合計100万円だったとする。そうすると、1月15日の領収印が捺された納付書の原符(金融機関控え)が5枚あって、その合計金額が100万円になるはずだ。まずその原符をチェックする。

「それから、1月15日に100万円の公金を収納しているということは、別段預金に100万円の入金がされてなければならない。だから、別段預金の元帳をチェックする」

後輩「なるほど、ここで元帳が出てくるんですね」

俺「まだある。1月15日に収納した100万円は、翌日の16日に指定金融機関に払い込まれる。領収済通知書を指定金融機関に持ち込むんだけど、これに『公金払込書』を添付する。公金払込書は3枚複写式で、収納日と領収済通知書の枚数、合計金額を記入して、1枚が市保管、1枚が指定金融機関保管、1枚が収納代理金融機関保管分になる。収納代理金融機関保管分の公金払込書の1月15日分に、ちゃんと5件100万円と書かれていること、指定金融機関の領収印が捺されていることを確認する。

「資金を小切手で払い込んでいる場合、指定金融機関から領収書を受け取っているから、その金額が100万円であることを確認する。最後に、小切手が交換所に回って決済されると、別段預金から資金が払い出されるから、100万円が払い出されていることを、別段預金元帳で確認する」

後輩「わかりました。やってみます!」

俺「まあ、俺たちは金融庁でもマルサでもないから、あまり気負いすぎないように。基本、どこの金融機関もちゃんと処理してるはずだから、不正を探す、とかじゃなくて、正しく処理されてることの再確認のために検査に来た、くらいのつもりで、ね」

 

大体、市役所ごときのゆるい事務処理と違って、金融機関は非常に厳しいコンプライアンスの下で日々の業務を行っているのだから、素人同然の市役所職員が検査に入ったところで何かが見つかるはずもあるまい、と思ったけど言わないことにした。