起債と相殺枠

ところで、自治体の保有する現金は、指定金融機関等の預金として管理することが原則です。
他方、いわゆるペイオフ解禁以降、金融機関が万一破綻した場合、預金保険により保護されるのは預金債権のうち元本1000万円とその利息に限られることとなったため、これを超えた部分は返済を受けられない可能性が出てきました。
預金口座の種類として、利息のいっさい付かない「決済性預金」というのがあり、これについては全額が保護されることになります。したがって、1000万円を超える現金については、決済性預金に預け入れておけばまあ一応安心、ということになります。
しかし、億を超える金を一定期間預け入れるときに、利息が一銭もつかない決済性預金でいいのか。定期預金にすればいくらかの利子がついて多少なりとも自治体財政の助けになるのではないか。


他方、自治体は金融機関に対し、債務を負っていることがあります。
その主なものは市債の引き受けです。わが市のような一般市が市債を発行する場合、多くは銀行等引受債(縁故債)といって、金銭消費貸借契約により金融機関から資金を借り入れる、という形態をとります。(公募債と縁故債の話とか、証券方式と証書方式の話とか、そのへんの話も書きたいけどまたいずれ別の機会に)
つまり、市債の残高=当該金融機関に対する市の債務です。
ということは、ペイオフ発動のタイミングより前に相殺適状に達することができれば、預金債権と市債残高を相殺することで、市の財産を保全することが可能になるわけです。


このため、市債の発行:償還の状況を金融機関ごとに把握することにより、市債残高の額までであれば、定期預金等の、より市に有利な預金口座に預け入れる、という選択が可能になるわけです。
今日の公金保全、資金管理の立場からは、このように、個別の現金の保全管理だけでなく、市全体の債権債務の状況をトータルで把握し、市にとってもっとも有利な選択は何か、を都度判断することが求められているわけです。


……もっと突っ込んだ話を書くつもりだったけど、前提条件の説明だけでめっちゃ長くなったので続きはまた今度。