よくある質問と回答

Q1:放射線をどのくらい浴びると危険なの?
A1:ここまでが安全、ここからが危険、という明確な境界線はありません。

 低線量の放射線を長期にわたり浴びた場合の健康影響については、しきい値のない一次関数的なもの(確率的影響)となるという考え方が一般的です。一般的です、と言ったのは、積算の被曝量で100ミリシーベルト未満の部分については、科学的に解明されていない、というのが現実だからです。
 おおむね100ミリシーベルト以上の被曝量については、被曝線量を横軸に、がんの発症率を縦軸にとると、一次関数の直線を描くことが知られています。しかし、100ミリシーベルト未満の部分については、被曝線量と発がん率との間に有意性が認められません。これは、100ミリシーベルト未満の被曝線量の集団においては、被曝線量の多寡よりも、その他の要因(代表例として、喫煙の習慣の有無)による差が大きいことによるものです。
 あえて誤解を恐れずに言えば、ごく低線量の被曝の場合「健康に悪影響がないと断言はできないが、少なくとも、タバコよりは安全」ということにもなろうかと思います。
 したがって、被曝を避けられるときは避けるにこしたことはないですが、あまり低線量の場合まで気にしすぎるのも考えものです。例えば「放射線は健康に悪いから浴びたくない」という理由で胸部エックス線検診を拒否したために、肺がんの発見が遅れたとしたら、健康管理の面からは本末転倒です。


Q2:内部被曝予防のために、海藻をたくさん食べるといいって聞いたけど、本当?
A2:海藻をたくさん食べても、放射性ヨウ素による内部被曝の対策にはなりません。

 放射性ヨウ素による内部被曝の緊急的な予防策として、安定ヨウ素剤を服用し、甲状腺を安定的なヨウ素で飽和させる、という方法がありますが、これはヨウ化カリウムの製剤を用いるものであり、これに比べれば海藻に含まれるヨウ素の量など微々たるものです。ヨウ素が含まれていれば何でもいい、というものではありません。
 ヨウ素自体は人体の必須元素と言われています。また、海藻には色々なビタミンやミネラルが含まれており、栄養価の高い食品であることは確かです。内部被曝うんぬんとは関係なく、食生活に海藻を意識して加えることは、健康増進に役立つでしょう。


Q3:放射能汚染された土壌を浄化するために、ヒマワリを植えるといいって聞いたけど、本当?
A3:可能性はあります。ただし、土壌浄化の技術として確立された手法ではありません。

 放射性物質のうち、放射性セシウムについては、その化学的性質がカリウムと似ていることから、植物の成長段階でカリウムと同様に取り込まれる可能性があります。土壌からセシウムを吸収する量が多い植物として、ヒマワリやナタネが期待されているところです。
 しかし、ヒマワリを植えた場合の土壌浄化の効能については、まだ研究データが十分出揃っているとはいえません。
 それ以上の大問題として、放射性セシウムをたっぷり吸収した後のヒマワリを、どうやって処分するか、という問題があります。放射性物質は「元素」なので、生体機構により分解されるものではありません。もう少し分かりやすく言うと、土壌中のセシウムはヒマワリの中に「移動する」だけであって、量が減るわけではありません。したがって、ヒマワリを植えたことで土壌浄化に効果があったとしたら、同時に、放射性廃棄物となったヒマワリの処分方法を考えなければならない、という次の問題が発生するわけです。