ジュリスト(No.1387)

 最新のジュリストで金井利之・東大教授がいいこと言った。

 自治体が政策的に「強く」は選好していない事業に、国庫支出金が付くことがある。この事業は、義務的事業の場合と異なり、法制的に強制されているわけではないので、自治体は採用しないことも可能である。その意味では、任意的事業と呼ぶことができるのであるが、国庫支出金が付く以上、言葉の正確な意味での「任意」ではない。というのは、採用しない場合には、得られたであろう国庫支出金を、みすみす失うことになる、ことが意思決定の考慮事項に入ってくるからである。(中略)
 補助率が高ければ、それだけ自治体は天秤に架けるときの負担が少ないため、国の推奨する衡量的事業に乗りやすい。それだけ、国の自治体への誘導力は大きくなる。この極端な例が、定額給付金である。100%補助であれば、職員などの事務作業に人件費を割かれる面はあるが、基本的には「貰わなければ損」ということになる。したがって、義務的事業でも標準的事業でも共同的事業でなくとも、完全に実施されるのであり、極めて集権的である。
 『国・自治体間関係における法制と財政―国庫支出金を中心に』金井利之、ジュリストNo.1387、p157-

 財政的なリソースが自治体の政策決定にどのような制約を課しているか、から一歩踏み込んで、財政的なリソースの配分をコントロールすることによって、自治体の政策決定がどのように操作されうる(又は、現に操作されている)のか、を明らかにするなら、金井教授のこの論文は入口論の整理として非常に有用。