公民館の指定管理者

 自分が直接担当した業務ではなく、お手伝い程度しか関わってないので、ほんのさわりの話だけ。
 まず、公民館に指定管理者を導入するに当たり、最初のネックとなるのは、必置職員と言われる館長の問題。社会教育法28条で、館長は「教育委員会が任命する」と書かれているので、普通に文理解釈すれば、館長は特別職の「公務員」となる。
 つまり、せっかく指定管理者を導入しても、市の職員を最低1人置かなければいけない状況に変わりはなく、コストの低減につながらない。
 だから指定管理者の導入が進まない、という苦情が中教審の分科会かどこかに持ち込まれ、事務局の回答としては「館長は必ずしも公務員である必要はない、ということの周知を図る」とか何かそんな感じで、結局通知1本で終わりにされてしまった。
 この時点でまず「だったら法律改正しろよ」と憤った自治体職員は俺の他にも1800人くらいいるものと思いたい。


 そんなわけで、出だしからつまづくので、例規審査担当部門としては実にやる気の出ない案件になってしまうのだが、ひとつ頭を悩ませたのが、使用料の取り扱い。
 本市の場合、公の施設の設置管理条例の中で、使用料の減免についての規定を置いている。指定管理者制度導入前は「市長が必要と認めるときは」減免できる、というような規定だったのだが、指定管理者への移行に当たり、減免基準を例規で明文化する必要があるだろう、との判断をし、「指定管理者は、規則で定めるところにより」減免する、という規定に置き換えて、規則で具体的に減免するケースを各号列記することにした。
 ところで、公民館の事業は地方教育行政の組織及び運営に関する法律23条12号で教育委員会の職務権限に服するが、公民館の利用に伴う使用料の徴収については、地方教育行政法にも社会教育法にも特別の規定がないから、自治法に基づき、首長の事務となる。
 したがって、実務を円滑にするためには、公民館の利用に係る使用料の徴収について、市長から教育委員会に事務委任を行う必要があるわけだ。
 で、公民館条例の指定管理者制度への作り変えに際し、やはり改正前の条例には「市長が必要と認めるときは減免する」旨の規定があり、さてこれを他の施設と同様に減免基準を規則で明文化する形に書き換えよう、というところになった段で、困ったことになった。
 公民館条例の下には、管理運営の細目について定める「公民館条例施行規則」がある。使用料の減免基準も、当然ながら、この施行規則の中に入ってくるべき事項だ。
 公民館の業務は教育委員会が行うから、公民館条例の施行規則は、「教育委員会の規則」であって、市長の規則ではない。
 したがって、「指定管理者は、教育委員会規則で定めるところにより、使用料を減免する。」という規定を書いてみて、どうもこれは違うぞ、という話になった。条例の段階では、まだ事務委任はされていないのであって(先に条例で使用料を課することが定められたことにより、市長において使用料の徴収事務が発生し、それから、市長から教育委員会に権限を委任することを決定する、という順番にならなければならない。)、つまり、条例制定の時点では、教育委員会に事務が委任されることを前提とした規定ぶりは許されない、という壁に突き当たってしまった。


 で、結論としては、「上手い解決策はない」というオチなわけだが。オチてないし。
 結局、条例上は「市長が必要と認めるときは減免できる」のような文言をそのまま残しておき、規則でなるべく減免基準を明確化する、というくらいしか打つ手がないと思うんだけども。