歳入歳出外現金

自治法上、自治体の保管する現金は、自治体の所有に属する「歳計現金」と、自治体の所有でない「歳入歳出外現金」に分けて考えることができます。

と、いうだけの、本来簡単な話なのですが。

ここに、「債権の担保として徴するもののほか…法律又は政令の規定によるのでなければ、これを保管することができない」という規定(自治法235条の4第2項)があるせいで、話がややこしくなってきます。

 

規定の意図は非常によく分かります。自治体の取り扱う現金は、まず第一に歳入歳出予算に計上される歳計現金であって、歳計現金以外の現金をむやみに保管すべきではない。法令上やむを得ず一時保管するものは仕方ないとしても、そうでないものはやたらと自治体が預かるべきでない。まったくその通りで、ここで言う「法律又は政令による」の範囲は、やたらと拡大解釈すべきではない。実に真っ当な理論です。

他方で、今日の自治体は、一方的・優越的な行政庁としての顔ばかりでなく、一個の権利義務主体=法人として、地域経済活動の(何ら特別なところのない)アクターとしての立場も求められるところです。

法律又は政令によるとまで言えるかどうか危ういような、代理や事務管理のような立場で、自治体の所有に属しない現金を保管する必要性が生じないと、本当に言いきれるでしょうか。

むしろ、法令に根拠を持たないものは歳入歳出外現金として出納を行うことができないからという理由で、その保管に係る現金を、隠れて処理するような不正を助長することになりはしないでしょうか。

 

ここ二十年くらいの間で特に、自治体の事務、とりわけ財務会計に係る事務については、結果の法適合性だけでなく、過程の透明性・検証可能性が重要度を増してきているように感じます。極端に言えば、透明性さえ確保されていれば、大概の事務については、正しいかどうかは市民と議会が判断できるのではないでしょうか。

歳入歳出外現金についても、法令の根拠の有無を前面に出すよりも、まず「自治体の保管に係るすべての現金は、検証可能な形で会計の記録をする」ことを徹底し、その上で、当該現金を自治体が保管することが妥当かどうかは、当該自治体の市民と議会が民主的に検証すればよい(今日においてより妥当である)ように思うのです。