公共事業撤退のルール

 八ッ場ダムのニュースを聞かない日が珍しいくらいになってきた昨今。
 個別の事業についての見解は差し控えたい(それぞれの事業について詳しい情報持ってるわけじゃないしね)が、一般論として、あるいは法規担当者として、これを機に、国や地方公共団体が公共事業から撤退する際のルールが整備される、というのなら、大賛成。
 どうしても、役所の作る制度っていうのは、予定どおり順調に進行した場合のことしか考えてないことが多い気がする。誰も未来のことを正確に言い当てることなんかできないんだから、事業期間が長期にわたる場合、途中で社会情勢の変化があったりして、予定どおりに進められなくなったり、事業の公益性が失われてしまったりすることは、織り込んでおかなければいけないリスクだと思うのだ。ほら、国民年金制度とか
 いや、個別の事業の話じゃなくてあくまで一般論ですよ、一般論(念押し)。
 やはり、事業の途中で、これは当初の計画どおり進めるわけにはいかない、という状況が明らかになってきたときには、何とかして事業を完成させよう、という方向にばかり汗をかくのではなく、どうすれば被害を最小にとどめて事業から撤退できるか、という方向で知恵を絞ることも必要なんじゃないだろうか。ほら、戦は負けっぷりも大事だって前の首相のお祖父さんも仰ってたことですし。
 法をはじめとする各種のルールが、途中で事業中止する可能性を想定していない。(阿部泰隆風に言えば「行政性善説」、お上の立てる計画に間違いがあるはずがない、という固定観念だ。)だから、中止した場合にこれまで費やした負担金とかどうするんだ、みたいな議論が間際になって生ずる。中止した場合はこれこのように清算して返還します、っていうルールが予め定まっていれば、少なくとも「これまで○○円の事業費を費やしてきて、今さら清算して返金するわけにもいかないから、最後までやっちゃえ」みたいな、手続論が政策論を駆逐するような不健全な事態は、回避できるんじゃないか。
 こうした問題は国・地方共通のものであるとしても、やはり一般論としては、国の事業の方が規模が大きく事業期間も長く利害関係者も多数にわたる。だから、地域の生活再建だとか、新たな住民合意の形成だとか、困難な問題が立ちふさがるこの撤退戦において、国が先鞭をつけてくれると、以後その例に倣って事業中止の決断ができるようになるから、自治体としても今後非常にやりやすくなるのだが。
 というわけで、ダム問題、大いに期待して注目してます。全国の行政主体の未来のために頑張ってください国交省の中の皆々様。