利回りとは(国債の基礎の基礎)

 8日の短期金融市場で新発3カ月物国庫短期証券(短期国債)の利回りがマイナス0.005%と、2営業日連続で利回りがマイナスで売買が成立した。欧州中央銀行(ECB)の政策金利引き下げの影響が日本にも波及した。5日にはマイナス0.010%で取引が成立していた。(9/8日本経済新聞)


国債とは、国の借金です。
借金といっても、所定の用件を備えた証券を発行することにより、市場における債権の売買を容易にし、広く不特定多数の投資家から資金を集めることができるものです。このように証券化された債権のことを「債券」といい、日本国内で流通する債券の大多数は、日本国政府が発行する「国債」です。


国債は借金ですので、貸し手の立場となる国債保有者にメリットがなければいけません。国債保有することによる利益は、次の2つがあります。
1つ目は、利払いによる利益。国債保有していると、所定の利払い期日ごとに、発行時に定められた利率で利息を受け取ることができます。この利率をクーポンと言ったりします。
2つ目は、満期保有による償還利益。国債は借金ですから、満期まで保有すれば、券面に記載された金額の償還を受けることができます(電子化されてるのに券面記載って何じゃ、とか野暮な突っ込みは無しね)。もし、国債を券面額より安い価格で取得することができれば、取得価格と償還額との差益が、利益となるわけです。


したがって、国債運用によって利益を得るためには、「クーポン」「取得価格」「償還期限」から評価しなければいけません。同じ償還期限の国債であっても、「クーポン1%・価格99円」と「クーポン1.5%・価格102円」だったらどっちがお得なのか?
これを評価するための指標を「利回り」といいます。利回りとは、先述の2つの利益、利払いによる利益と償還利益を合算して、満期保有の場合に得られる利益を分子、償還までの期限を分母とした利益率です。したがって、クーポンも価格も多種多様な国債を比較してどっちがお得か考える場合、利回りを比較することが重要となります。


ところで国債の中には、発行から償還までの期限が3ヶ月〜1年程度の短い種類のものがあり、利払いのないもの、先に説明した1つ目の利益がないものがあります。これを利無債といい、割引債と言ったりもします(償還額と取得額の差益により利益を得るものであり、当然に、発行時に券面より安い額で=割り引かれた額で落札されるため)。
これらの、償還期限が短く、利払いがなく、通常券面額より割り引いて発行されるものを「国庫短期証券(TB)」といいます。
つまり、国庫短期証券の利回りとは、単純に、券面額と取得金額との差額を年利に換算したものです。


で、上のニュース記事に戻るわけですが。
国庫短期証券の利回りがマイナスで売買が成立した、ということは、券面額よりも高い金額で売買がされたということ。分かりやすく言えば、100円の国庫短期証券が100.01円で売買された、とかそんなイメージです。10001円払って国債を買って、3ヶ月間保有して償還を受ける金額が10000円、とすると、3ヶ月運用したのに1円損したことになります。
つまり、普通ならありえないことです。
原因としては日銀の国債買い入れとかユーロ圏の金融不安とか9月中間決算直前の在庫確保による品薄感とかまあなんか色々あるらしい(ごめん、このへんはよく分かんない)のですが、ともかく、国債の運用利回りについては現状ありえないくらいの低利水準にあって、国債で運用を図ってもさっぱり儲けが出ない、ということを理解していただければ、と思います。