素人でも5分で分かりそうでやっぱり分からない国債の話

10月23日(ブルームバーグ)財務省がきょう実施した国庫短期証券3カ月物の入札で平均落札利回りが初めてマイナスとなった。短国市場の需給逼迫(ひっぱく)を反映しているとともに、日本銀行のオペでの売却を見込んだ応札との見方が出ている。


財務省によると、国庫短期証券(TB)の3カ月物489回債入札で平均落札利回りはマイナス0.0037%となった。最高落札利回りは0.0000%と、2005年12月14日に付けたこれまでの過去最低水準に並んだ。5兆7100億円の提示額に対して、5兆2576億8000万円を落札。応札倍率は9.91倍と、13年7月18日以来の高水準となった。


Dちゃん(以下「D]):あれ?先月も「国庫短期証券がマイナス金利になった」って大騒ぎしてなかったっけ。今回は何が違うの?
トカゲ先生(以下「ト」):前回のは、セカンダリーマーケットでのマイナス金利。今回のは、プライマリーマーケットでのマイナス金利だな。
D:ぷらいまり?
ト:ちょっと、前回のおさらいをしてみようか。国債っていうのは国の借金だ、ってことを勉強したよね。普通の借金と違って、どんな特徴があるんだっけ?
D:えーとえーと、誰でも、買える?
ト:正解。国債とは、証券化され、市場での流動性を獲得することによって、広く一般の投資家から資金を募ることができる、国の借金なんだね。さて、この国の借金である国債、最初に買うのは誰かな?
D:んー?わかんなーい。
ト:例えばDちゃんが、国債を買いたいと思ったとき、霞ヶ関に歩いていって、財務省の建物に入って、『国債くださーい』って言うかい?言わないよね。
D:うん。銀行とか、証券会社で買うね。
ト:その銀行とか証券会社は、どこで国債を買ってきたのかな。
D:えーと……国?
ト:そう。国債の売り買いをする市場は、2種類あるわけだ。金融機関が国から国債を買い入れる市場と、金融機関や一般企業、個人の投資家なんかが、お互いに国債を売り買いする市場。前者を最初の市場、プライマリーマーケットと言い、後者をセカンダリーマーケットと言う。
D:ふーん。
ト:前回のマイナス金利っていうのは、セカンダリーマーケットの話だ。業者間の取引で、国庫短期証券がマイナス金利での取引が成立した。
D:じゃあ、今回のニュースっていうのは…
ト:そういうこと。プライマリーマーケット、つまり、金融機関が国から国債を買い入れる時点で、すでにマイナス金利になってしまったっていうことだね。ところで、プライマリーマーケットでの国債の価格って、どうやって決まるんだと思う?
D:んー、わかんない!
ト:少しは考えなさい。国債は、国の借金だと言ったね。国としては、なるべく有利な条件で借金をしたい。そんなとき、どうする?
D:……あ、競争入札だ!
ト:正解。国債の発行を行うプライマリーマーケットでは、国債入札参加資格を持つ金融機関が参加し、国の提示額に対して、価格を示して応札する。国は有利な条件のところから順に国債を割り当てていくわけだ。今回は、入札に参加した金融機関が、マイナス金利国債を落札した。
D:でも、なんでそんなことが起こるの?マイナス金利ってことは、儲からないってことじゃないの?
ト:いい質問だね。前回勉強したとおり、国庫短期証券の利回りっていうのは、取得価格と償還額の差益だ。マイナス金利ということは、額面より高い金額で購入したことになるから、満期保有して償還を受けても、差額分だけ損をしてしまう。金融機関はどうして、そんな条件で国債を買うんだろうか?
D:先生、僕が質問したのに聞き返すの、やめてよ。
ト:少し自分で考えてごらん。金融機関だって、自分たちの利益にならなければこんな行動はしないだろう。Dちゃんが金融機関だとしたら、どうすれば儲けが出ると思う?
D:んー……わかん…ない…
ト:額面より高い金額で買っちゃったんだから、そのまま最後まで持ってたら損をするよね。
D:…じゃあ、途中で売っちゃう?
ト:正解。もし、満期償還より前に、取得価格より高い金額で売却することができれば、金融機関は利益を得ることができるよね。
D:でも、もともとマイナス金利で、最後まで持ってても儲からないものを、もっと高い値段で買う人なんているはずが…あ!
ト:気がついたようだね。この1年くらいずっと国債を買い続けていて、最近はマイナス金利になってもなお、国債を大量に買い続けている機関がある。もう分かったね?
D:…日銀が、もっと高く買ってくれるんだ!


(つづかない)