憧れの赤い君

 思い返してみれば、子供の頃からニックネームは「先生」とか「師匠」とかの類が多かった。役所に入ってからも、同期の中ではなぜか「先生」と呼ばれている。
 見た目はよほど落ち着き払って見えるらしく(実際にはまったくそんなことはないのだが)、ヒトケタ間違う系の凡ミスをやらかした時に上司に「へー、おめぇでもそんなミスすることもあんだなー」って苦笑されたり、キャビネットひっくり返しそうになってわたわたしてると先輩から「いやー、D-lizさんのそんな姿初めて見たよー」と笑われたり、ちょっとしたミスや隙が相当珍しいもののように受け取られることが多い(いや、実際には隙だらけなんですよホントに)。


 そんな俺の今日のお仕事は「着ぐるみの中身」。環境啓発イベントの会場でのお仕事。
 しかも、某大手鉄道会社のICカードのイメージキャラクターも手がけた有名なデザイナーさんの手による、昨今のゆるキャラブームの中でも非常に優れた出来栄えのキャラクターの着ぐるみ。近県の皆様には分かっていただけると思いますが、あの赤い犬みたいな若干メタボ気味のナゾ生物。
 当日、入る予定だった人の体調不良により、急遽俺に出番が回ってきた次第。もともと大好きだったキャラクターに入り、しかもイベント会場に姿を現した途端小学生に囲まれて大騒ぎになって、開始5分でテンションMAXです。


先輩「大丈夫?少し代わろうか?」
俺「いや、ぜんぜん大丈夫です。っていうか、すげぇ楽しくなってきました」


後輩「D-lizさん、ちょっと俺にも着させてくださいよー」
俺「だめだ俺のチー●くんだ誰にも渡すもんか」


上司「D-liz、お疲れさん、暑かっただろ?」
俺「いやー、暑いんですけどねー、それ以上にすっげぇ楽しいんですよ」


 ……終わってから、いろんな人から口々に「いや今日はD-lizさんの意外な一面を見たねー」と言われまくったのはまあ予想通りの展開です。
 つーか、こういう軽いノリの人間なんですってばほんとに。