地方自治の本旨と地方議会

 住民訴訟と債権放棄議決に関連して、以前、国の地方制度調査会が当該議決を禁止するような自治法改正を検討してるとか何とか報じられたことがあって、「それは国に指図されることじゃネェ」と感想を抱いたことがあるのですが、要するに、今回も同じ気持ちです。
 見方を変えると、地方議会は、中央権力からこのようなツッコミを食らうような事態を避けるためにも、十分に議論の過程を透明化し、住民への説明責任を果たし、住民をちゃんと味方につけた上で、議決を行う必要があるのではないでしょうか。

 自治体議会が、なぜ、以上にのべたような活動をしないのかといえば、前述しましたように、戦後の自治体議会発足時に、戦前型の国の官僚内閣制による国会運営をモデルとした官僚法学、講壇法学にもとづいて自治体議会解説書が書かれたため、これが議会運営の基準としてその後定着してしまったからです。よく知られているように、一九四七年に内務省系官僚がつくった『都道府県議会会議規則準則』がまずモデルとなり、一九五六年の『標準都道府県議会会議規則』以降見直しが幾度かおこなわれたにもかかわらず、実質は変わっていません。地方六団体は自治省がおさえこんでいますから、市議会、町村議会でもほぼ同型です。いわば官製モデルの標準があること自体、個々の自治体でわずかな独自性をみせても、日本の自治体ないし自治体議会が国の官治・集権政治にくみこまれて、個性を多様に発揮しうる自治・分権政治の堡塁となりえていないことをしめします。
松下圭一『自治体は変わるか』岩波新書、p72-p73)

 ……越えるべき壁は高い。