コンクリートから人へ

 産業構造の転換に伴い地域の生活保障をどうするか、という問題に直面したのは、これが初めてのことではない。つい数十年前に、同じようなことが、「石炭から石油へ」という文脈で語られたことがあった、はずだ。
 昭和36年に「産炭地域振興臨時措置法」が制定されて後、旧産炭地はいずれも、新たな産業誘致に血道を上げてきた。国も地方債の起債に交付税措置で配慮する等のバックアップを行い、様々なインフラや公共施設の整備がされた。大型テーマパークやホテルなどを次々オープンさせ、国際映画祭を誘致し、多くの観光客を呼び込むことに成功した某市などは「自治の優等生」ともてはやされたものだ。


 ……その後どうなったかは皆様ご承知のとおり。


 当時と今とがまったく同じだ、などと言うつもりはない。「コンクリートから人へ」という方向性が正しいのかどうか(私個人の意見としては、福祉が「産業」として成立するかどうかにはいささか懐疑的だ。「グリーン・ニューディール」の方がまだ可能性がありそうな気がするが、それだって10年前に「IT革命」って叫んでいたのとそんなに状況は変わらないと思う)も、現時点では何も確かなことは言えない。
 ただ、この国の地域経済を長らく支えてきた土木・建設産業が、今後パイの縮小を避けられないとするならば、何らかの産業構造の転換が(緩やかなものであるか急速なものであるか、という問題はあるにせよ)不可避なのであり、その際に、過去の失敗から学ぶべきことは少なくないと思う。