ロールダウン効果

債券運用の外部研修があったので、後輩に行ってきてもらったときのこと。後輩の作った復命書を見ながら。

上司「この、ロールダウン効果っていうのが前からよく分からないんだよね。どうして債券が値上がりするの?」

俺「イールドカーブが順イールドの場合、残存年限が短くなると利回りは低下するから、債券価格は上がるんですよ」

上司「?」

俺「例えば、年限10年でクーポンレート10%の債券があったとします。利回り10%だとしたら、債券価格は100円です」

上司「うん」

俺「この債券を5年保有すれば、残存年限は5年になります。クーポンレートは10%のままです。このとき、5年ものの債券の利回りが5%だったとしたら、債券の価格を高くしないと利回りが合いません」

上司「…あ、そうか」

俺「市場利回りに合わせると、この債券の価格は102円くらいになるはずです。つまり、この債券を10年もの新発債として購入し、5年間保有して売却すると、クーポン10円×5年分と、売却差益の2円、合わせて52円の儲けになるわけです」

上司「なるほどそうか、クーポンレートは変わらないから、価格で調整されるんだね」

俺「一般的に、イールドカーブは長期のゾーンに行くほどスティープ(傾きが急)な傾向があるので、例えば20年ものの債券を購入し、3年経ったら売却して、また20年ものを買う、というような戦略で、利回りの向上を狙うやり方があります」

上司「なるほど」

俺「ただし、将来にわたってイールドカーブが動かない保障はありません。イールドカーブがフラット化すれば利回りは悪化しますし、可能性は低いですが、逆イールドになれば損をすることもあります。あと、長期債を保有するということは、その分の資金(基金)を引っ張り出せないということで、繰替運用はできなくなります。支払準備金不足時には、一時借入金を使うか、債券売り現先取引などの、別の資金調達手段を講じる必要があります。…そんな説明で、いいよな?」

後輩「僕の言うことなくなっちゃいました」

俺「(しまった、先に後輩にしゃべらせればよかった)」

 

債券に限らず金融商品は、リスクを利回りに変換して釣り合いを取っているので、フリーランチ(リスクがないのにリターンが大きい)はないものと心に刻んで、地方自治体という業態でどこまでのリスクを許容できるのかを過不足なく判断することが重要と思います。