9年前の自分に教えを請う

あけましておめでとうございます(しれっと

年が明けると条例改正シーズンですね。あまりに久しぶりすぎていろいろ忘れてますしそもそも自分、今年は条例担当ではない感じなのですが国保条例の改正の見込みをちょっとだけ整理。

 

【改正動機1:国保料(税)の賦課限度額引き上げ】

国保料(税)は、前年の所得に応じてかかる「所得割」の分があるため、所得が高くなればなるほど、保険料の賦課額も高くなります。

このため、保険料の賦課額には「賦課限度額」が定められており、限度額は、政令国民健康保険法施行令)で定める基準に従い、各保険者が条例で定めています(国民健康保険法76条、81条、施行令29条の7)。

保険料は「医療分」(療養の給付等、医療保険制度のために使用される分)「支援分」(後期高齢者医療保険へ拠出金する支援金の原資となる分)「介護分」(介護保険へ拠出する介護納付金の原資となる分)の合計として算定されますが、現行の政令では、医療分の限度額が58万円、支援分が19万円、介護分が16万円と定められています。

今回、医療分の限度額を61万円に引き上げるため、政令改正が予定されています。(支援分・介護分は据え置き)

限度額を引き上げた効果としては、高所得者の負担が増となり、その分、中間所得者層の負担が軽減される、と一般的に説明されます。(医療給付等に要する経費総額が変わらない以上、集めるべき保険料総額も変わらず、賦課限度額をいくらにするかという問題は、集めるべき保険料総額のうち誰にいくら負担してもらうかという問題になる。言い換えれば、限度額を引き上げることで、中間層への影響の大きい保険料率そのものの引き上げを抑制できる)

保険料の賦課については、政令に基づき各保険者の条例で定めており、限度額も条例に明記されているため、基本的に、政令が改正されれば条例も改正されるという判断になります。(政令改正無視して条例の限度額を据え置いたらどうなるだろうと想像してみたが、療給負担金や調整交付金などの公費が引き上げ後の限度額を前提として算定される結果、引き上げ相当分を市町村が自主財源で独自に軽減したのと同じ効果になりそうな気がする。そうすると、税金使ってわざわざ高所得者を優遇しているような見かけになり、現実的でないのか)

 

【改正動機2:軽減判定所得の引き上げ】

低所得者の負担軽減のため、国保料には、所得が一定の基準額を下回った場合に、保険料が一定割合軽減となる仕組みがあります。

具体的には、

  • 世帯主と加入者の合計所得金額(軽減判定所得)が33万円以下の場合は、7割軽減
  • 軽減判定所得が「33万円+(27.5万円×加入者数)」以下の場合は、5割軽減
  • 軽減判定所得が「33万円+(50万円×加入者数)」以下の場合は、2割軽減

となっています。これも、政令で定める基準に従い条例で定める事項です(国民健康保険法76条1項、81条、施行令29条の7第5項)。

ところで、景気拡大・物価上昇の局面にあっては、低所得者の実際の生活水準が変わらないにもかかわらず、所得金額が上昇するため、生活水準が向上しないのに軽減措置の対象から外れてしまう事態が想定されます。このため、慣例的に、物価上昇率を踏まえて、軽減判定基準額の見直しが行われてきています。

今回は、30年度の政府経済見通しを踏まえて、5割軽減の基準額を「27.5万円→28万円」、2割軽減の基準額を「50万円→51万円」に引き上げる方向で、政令改正が予定されています。これを受けて、条例改正が必要となるものです。(法令と条例の関係・改正しなかったらどうなるかについては、改正動機1の場合と似たようなもの。こちらは条例改正をしないと、国費等を受け取って低所得者軽減費用に充てることができるものを、わざわざ国費を受け取らず、その分を低所得者から保険料として徴収しているような状態になるのかな?)

こちらの改正については、「物価上昇の影響で軽減対象者の範囲が狭くなってしまうのを防ぐため、軽減判定基準額を引き上げ、前年までの軽減対象者と同等の範囲を引き続き軽減対象とする」ためのものなので、理論的には、この改正によって国保財政への影響はないことになります。(むしろ、この改正をしないと、軽減対象者が減る=低所得者の負担が実質的に増加する、という理屈になります。)

 

今回の改正は以上2点です。平成31年4月1日から施行し、平成31年度分の保険料から適用されます。

条例改正のスケジュールは政令に依存しますが、昨日(1月22日)の閣議で、改正政令閣議決定された模様です。平成31年1月22日(火)定例閣議案件 | 閣議 | 首相官邸ホームページ

なので、今週末くらいの官報で出てしまうので、3月議会の当初議案に載せない理由がないですね(白目)。

 

以上のほか、検討事項として「旧被扶養者の減免期間の見直し」というやつがありますが、D-lizの個人的見解としてはこの件は条例改正不要で。つーか、長くなりすぎたのでこの件は別エントリとしたい。

ここまで書くために、9年前の自分のブログのエントリを必死で読み返していろいろ思い出しつつ、小声で「どひー」と呟いております。