機関=器官
新規採用職員研修の準備を進める中で、後輩(2017年度新規採用)に講義内容をチェックしてもらっています。
俺「今年、研修受けた中で、ここが分かりづらかったなーっていう部分とかあったら、教えて?」
後輩「あの、法定受託事務と自治事務、でしたっけ?あのへんの話が難しかったです」
俺「なるほど。法定受託事務っていうのは、『本来、国や県が行うべき事務だけど、法律上市が行うようになっているもの』だね。本来国がやるべきものを第一号法定受託事務、本来県がやるべきものを第二号法定受託事務という。第一号法定受託事務の例を挙げると、戸籍事務とかパスポート発行とか国勢調査とか」
後輩「そう、それです!そういう具体例があるとすごく分かりやすいです」
俺「なるほど、具体例大事、と(メモメモ)。第二号法定受託事務は、具体例が難しいんだよね。県知事・県議会議員選挙とかかな」
後輩「分かります、分かります」
俺「自治事務は、自治体の事務のうち法定受託事務以外のものが、全部自治事務だ。…法定受託と自治事務について深く知ろうとするなら、分権一括法による機関委任事務の廃止から説明しないといけないんだけど。平成12年(分権一括法施行の年)だと、後輩君、何歳だった?」
後輩「小学校入ったくらいですねー」
俺「だよなー。…俺が役所入った頃は分権一括法直後だったから、このへんの話は感覚的に分かるんだけど。今の若い子にそのへんを感覚で理解してもらうのは、難しいか」
後輩「機関委任事務の話も研修で教わったんですけど、正直、難しくて…」
俺「機関委任事務っていうのは、知事や市町村長が、国の『機関』として、国の指揮命令の体系に入って仕事をすることなんだ。『機関』って言葉の意味は分かる?」
後輩「…分からないです」
俺「『機関』ってのは『器官』なんだ(ノートに『機関=器官』と書いて見せる)。法人である自治体を一個の人間の肉体だと考えると、機関っていうのは手足であったり心臓や肺であったり胃腸であったりする、器官に相当する、って考えるとイメージしやすい。ところでこの『機関=器官』っていうのは、とある有名な発言エピソードからの受け売りでね。誰の発言か、分かる?」
後輩「さすがに分からないです」
俺「昭和天皇だ」
後輩「…………?」
後輩「(顔がぱあっと輝く)分かります、分かります!日本史の授業でやりました!」
俺「天皇機関説で美濃部達吉がフルボッコにされてたときに、昭和天皇が『機関って、器官だろ?国家を人体に例えれば天皇は脳髄だって、そういう話だろ?そんなに変なこと言ってるようには思わないけどなあ(超意訳)』って言って美濃部を擁護したってエピソードが残っていてね」
後輩「なんか分かってきました」
俺「話を戻すと、機関委任事務っていうのは、市長が国の手足となって仕事をするってことなんだ。…(ここで時計を見る)うわ」
後輩「?」
俺「話が広がりすぎて時間内に収まらないのが、俺の悪い癖だ。…講義、3時間で収まるかな」
後輩の理解力が高すぎるので、何だか自分がすごくいい先生になったような錯覚に陥っているのは内緒だ。